2017年9月9日、年々盛り上がりを増す中洲JAZZ。今年もお天気に恵まれ、熱いライブが公園のステージやストリートなどで開催されました。15歳の時に歌手でデビューした高岡早紀さんも、中洲JAZZ2017に初登場!2017年8月23日にリリースされたアルバム「SINGS -Daydream Bossa-」やジャズへの想いなど、4人のバンドメンバーを迎えて女優ではなくヴォーカリストの高岡早紀さんとして、お話を伺いました。中洲JAZZライブレポートとあわせてお届けします!
前回のアルバムは、約23年ぶりのニューアルバム。世界的なジャズピアニスト山下洋輔さんが参加された、ジャズのテイストを取り入れたラブソング集です。きっかけになったのは、映画のエンディングに流れた「君待てども~I’m waiting for you~」というカバー曲。たくさんの賞を受賞するほど、女優としての地位とイメージが確立している高岡早紀さんですが、デビュー当時はアイドル歌手だったことを知っている人はそう多くないはず。
高岡さんのお父さまは、ジャズミュージシャンが憧れるジャズクラブの老舗、「横浜エアジン」の創始者。ご両親ともジャズが大好きという環境で育った背景があります。
「SINGS -Daydream Bossa-」では、ボサノバという雰囲気が違うものにアレンジされていても、ジャズのニュアンスを醸し出しています。それは、やはり横浜エアジンの影響や流れがありジャズとの関わりが強いからなのでしょうか。
高岡さんの歌声は、甘めのウィスパーボイスが特徴で、ややかすれるところも魅力的。デビュー当時には曲を提供していた故加藤和彦さんが歌い方を教示していたとか。
今回のアルバムでは、いわゆるブラジルのボサノバとはちょっと違う、新しいジャパニーズ・ボサノバという印象も受けますね。
中洲JAZZといえば、中洲大通りを歩行者天国にして組まれたステージセットや、木々に囲まれた川沿いの会場など、天神・中洲界隈の10ステージで繰り広げられる本場ジャズライブ。今回中洲JAZZには参加できるだけでありがたい気持ちでいっぱい、と語る高岡さん。
ふと、以前映画の撮影で訪れたキューバを思い出したそう。キューバでは、毎夜、街中で音楽が流れていて、同じような雰囲気だったとか。まわりの人にはいつも恵まれていたという高岡さんのアルバムには、フリューゲルホーンプレイヤーのTOKUさんとのデュエットも。高岡さんのウィスパーボイスにTOKUさんのやや重厚な声のハーモニーが生で聴けるなんて贅沢な夜です。
日が暮れ、那珂川沿いの清流公園REDステージにはすこし秋めいた風が吹いていました。本番を迎える30分前の会場では、入場制限がかかるほど。セットリストは今回のアルバムに前回のジャズナンバーが数曲加わり、ボサノバにジャズも楽しめる構成になっていました。
〈 セットリスト 〉
やさしいメロディ ~ケ・セラ・セラ~
イパネマの娘
I see your face
君待てども~I’m waiting for you~
こころのままに
白い波
Ni-a-o
永遠のダンサ
-アンコール-
SLEEP WALKER
1曲目の「やさしいメロディ ~ケ・セラ・セラ~」はアルバム「SINGS -Daydream Bossa-」でも一曲目に収録されている曲。メロウなボサノバのリズムに、女優としての動きや雰囲気づくりが相まってさらに素敵です。髪をかき分けたり手をふるしぐさに、観客も引き込まれていきました。
ボサノバの神様のような存在“アントニオ・カルロス・ジョビン”の「イパネマの娘」は、初めの日本語で歌うアンニュイな4拍子に、身体も自然に揺れてきます。後半のポルトガル語も高岡さんのキュートな声にマッチ。
3曲目に、高岡さん自身が作詞、山下洋輔さん作曲の「I see your face」。サンバのリズムにも抑えた高岡さんのウィスパーボイスで歌う世界。透き通る、甘すぎないI Love Youが心に響きました。
つづいて「Bedtime Stories」から「君待てども~I’m waiting for you~」。これは前回のアルバム同様、ピアノとのDUO。どこか寂し気でアンニュイ、しっとりと美しいスローテンポの「君待てども」には、高岡さんの魅力がいっぱい。
ここでメンバー紹介MC後、演奏されたのは「こころのままに」。コンテンポラリーで爽やかな曲。スキャットに、波や風を感じます。
そして福岡市民はお待ちかね!「スペシャルゲストTOKUさん登場!」というアナウンスで会場は盛り上がり「白い波」を披露。懐かしさもあるボサノバのデュエットに、フリューゲルの音色が加わり楽しさが増してきました。
7曲目は「Ni-a-o」。ボサノバから入り、途中でテンポが変わるややスパイシーな曲で、ジャズの自由な雰囲気に会場が包まれます。
最後の曲は「永遠のダンサ」。この曲の作詞は、高岡さんのデビュー当時に作詞を担当していた真名杏樹さん。少しゆったりしたサンバのリズムに、高音域が本当にキュート。高岡さんの“大人可愛い”がピッタリでした。
アンコールにも応えてくれました!なんと、作詞森雪之丞、作曲加藤和彦というアイドル歌手時代の「SLEEP WALKER」。当時のフレンチポップが炸裂。曲間には個々のメンバーのジャズテイストの演奏が入り、加藤和彦さんのセンスの良さも改めて感じます。アレンジされた懐かしいナンバーを聴くことができ、観客の中には涙ながら聴いてらっしゃる方も…今夜が特別な夜になったことでしょう。
デビューから30年。歌手から女優を経て、きっと長い時間をかけ育まれてきた表現力が、ジャズやボサノバと融合しながら進化し続けていく—そんな高岡さんが描く音楽の世界に、彼女の歌を聴いた誰もが引き込まれたのではないでしょうか。コアなジャズファンはもちろん、ジャズに馴染みがない観客も引き込んでしまうのは彼女の天性の魅力なのでしょう。これからも歌い続け、私たちに新たな驚きを与えてくれそうです。その生き方がジャズのように…。