INTERVIEW

黒木渚 「ふざけんなよ世界、ふざけろよ」ミニライブ

【interview】黒木 渚

IMG_9634-1024x683

──────お疲れ様でした。まずはじめに、「ふざけんな世界、ふざけろよ」にかける思いについて教えて下さい。

黒木渚(以下、黒木):まず、春らしく明るいサウンド、そしてお祭りのようにダンサブルな曲を作りたいというのが念頭にありました。それと、コメディの力であったり、ユーモアが時としてすごい武器になりえるなと思っていて。
私たちの生活の中にある「ちくしょう、ふざけんな!」というマイナスのエネルギーをコメディとかユーモアの力で、明るくはじき飛ばしていく強さが描きたかった。そこ抜けに明るく愉快な曲を作ってやるということで書きました。

──────どんな時にこの曲を聞いて欲しいですか?

黒木:ピンチはチャンスと言いますけど、時々気持ちがひどく張りつめてしまう状況ってあるじゃないですか。だけど、人って割と究極の状況になると笑けてくるみたいな時があると思っていて、例えば、「仕事が忙しすぎて徹夜が続いて、もうしんどすぎて笑える」みたいな。そんな風に追い込まれてしまった時にこの曲を聞いて欲しいと思います。かろやかにピンチはチャンスに、思考回路のスイッチが切り変わるかなと思っています。

──────今回のインタビューにあたって調べさせていただいたのですが、音楽活動をしているなかで、「音楽は民主的に作るものではなく、もっと曲を作った人間がイニシアチブをとって曲作りしないと個性が薄れていく」と思われているのを知ったのですが、今も思われているのでしょうか?

黒木:これはバンドや性格にもよると思います。私の場合は、「黒木渚」という前身のバンドがありましたが、作詞作曲者である私が最後まで再現、責任を持って作るべきだったなと振り返ってみて思います。
上手に役割を分担して、良いバランスでやっていける人ももちろんいると思うんですけど、私の場合、例えば、バンドメンバーと友達同士だったりすると、その人たちの個性や人間性などを重要視しすぎちゃって、音楽にストイックになれなかった。厳しく言えない。ダメなものをダメと言えない。それが良くないなと思っていて、そのことに、いちいちストレスになるのだったらいっそのこと一人でやっていくと。
それで、どんな結果が出ても自分の責任として受け止める、という方が結果的には性格に合っていたんだなと気付きました。

──────意思決定は自分でやっていこうと?

黒木:自分が思ったイメージを明確に、形に変えていくという作業を、自分でやっていく。今ソロとなり、余計、色んな人に助けてもらうようになってはいるんですけど、ソロアーティストだと自分で決断しなければいけないことが多い。それらの選択や決断は自分で行っています。

──────活動をしていく中でこれだけは譲れないというものとは?

re_IMG_9169黒木:思っていないことは歌わない。魂を売らないという、それだけです。それは、歌手として、ステージに「うしろめたさ」の類を持ち込まないということです。本心で歌えない曲でないと作っても意味がない。公務員というすごく安定したお仕事を辞めてまでこっちの仕事に来たかったのは、それだけやりたいことだったからで、こっちの世界でごまかしたり、歌いたくない歌を歌う意味が分からない。
私は解散をしたこともあり、それは、やってはいけないことだと思っています。なので、誠実に歌える曲を歌いたいし、信念に反することは出来ません。

──────安定を捨て、音楽の道に走りだしてからの気持ちの維持の仕方について教えて下さい。

黒木:その当時、バンドはバンドで、すごい頑張っていたし、仕事は仕事で、社会人1年目の厳しい世界に入ってきたと言うことで、どっちも全力でやらなければならないという状況でした。そのバンドと仕事の二足のわらじで同時にやると、どちらも中途半端になりそうなので、腹を決めなければなという意識がありました。
その時に、バンドの方が波に乗り始めていて、ファンの人も増えてきたし、応援態勢も整い始めてきていて充実感があったんですよ。しかもギャップがあるじゃないですか、クリエイティブな世界と公務員の仕事。そのギャップの中で揺れ動きながら、生活していて、じゃあこの先私は、何者として死ぬのだろうというすごいロングスパンで考えました。死ぬ時に公務員の黒木渚で死ぬのか、それとも音楽家の黒木渚で死ぬのか。どっちが充実しているんだろうって考えるとやっぱ音楽家でいたいなと。最後はその究極の二択で決めました。
人生で初めて100人が集まってくれたワンマンライブで、グッとこみ上げてくるものがあって、この人たちと武道館に一緒に行きたいなって。そこで、突発的に約束をしてしまったんです。「つれていくから一緒に行こうよ」って。約束してそこがいま、完全にモチベーションになっています。あの約束が無ければ趣味として、ずっとやっていたかもしれないですし、その約束が私としてのターニングポイントになりました。東京に出たのもその約束を実現するために決断したことです。

──────今までの自身の曲の中で最高傑作は何ですか?

黒木:制作で言うと、毎回最新作が最高傑作だと思ってやるんですよね。前回を越えるぞと。それもアートワークとかも含めて。どの曲もすごく大切にしているんですけど、その中でもお気に入りの曲として答えるとするなら、「骨」と「金魚姫」です。
「骨」は、私の姿勢歌のような曲になっています。私がどういうスタンスで生きているかをすごい明るく端的に表してるなと。私はとても楽観主義で、スーパーポジティブなんですよ。根アカで、どうせ死ぬんだから超楽しく生きようよ!ってタイプなんです。それが「骨」にはすごい出てて、お気に入りの曲になっています。
もう一つの「金魚姫」については、私は自分を武闘派だったり、強い女像、女戦士みたいなイメージでいるんですけど、でも「金魚姫」っていう曲は、すごく女の子らしいというか乙女チックな曲で、日本の伝統的な女性像みたいなのが書かれていて、そこがすごく気に入っています。さらに、サウンドもピアノがベースになっていて、そこもお気に入りです。

──────これからのビジョンについて教えて下さい。

IMG_9163

黒木:このまま順調にずんずん進んでいくってことなんですけど、やっぱり一番の動機になっているワンマンライブで集まってくれたファンの皆んなを、武道館までつれていくっていうのをずっと達成したいと思って追いかけている所です。
そして、もう武道館に着いた時には、次を見据えておかないと絶対ダメで。私が割と欲張りな所があるので。(笑)
楽しいことをどんどん欲張っていった方がいいと思っていて、こんなに楽しいんだからバチが当たっちゃうかもしれないみたいな怯えをしてるともったいないんで、もう武道館と言わず、行ける所まで行きたいと思っています。
そのためにはやっぱり、たくさんの人を巻き込んで会場を順調に大きくして、で、私が舞台の装飾とか演出とかがすごく好きなので、ちょっと変わった場所とか、ホールみたいな所で、大掛かりなセットを作れるとか宙吊り出来るとか。そういう場所に早く行ってみたいですね。

──────福岡の音楽ファンに向けて一言お願いします!

黒木:福岡はモチベーションの全てです。地方から東京に出て仕事をやっている身としては、帰る場所があるっていうのがめちゃくちゃ強くて、いつだって帰れるんだぞって思えることは、いつでも全力を出せるんだぞっていうことと表裏一体になっていて、ほんとすごく心強い。
あと、CDが売れない時代になっても、きちんとみんなCDを手元に買って応援してくれるっていうのが伝わっていて。特に九州の皆さんも、最初私が出した九州限定のシングルを手に取ってくれて、結果が出たから上京することが出来ました。そういう身になる応援をしてくれるということで、私が恩返しできるとしたら、新しくいい作品をバンバン出して、みんなの生活の支えになるようなものを送り込むことと、ライブで日々の息継ぎをみんなにしてもらうことだなと思います。